2025.05.23

キャリア自律

【企業向け】キャリア自律とは?支援のメリットやポイント・企業事例もご紹介

キャリア自律とは、社員が主体的にキャリア設計に取り組む姿勢のことです。企業の社員に対するキャリア自律支援は、さまざまなメリットがあり必要性が高まっています。本記事では、なぜキャリア自律が求められるかや、メリット、支援する際のポイント、企業事例を紹介します。

キャリア自律とは?

キャリア自律とは、社員一人ひとりが主体的に自らのキャリア設計・構築に取り組むことです。企業環境や雇用形態が変化するなかで、社員自らが柔軟な思考でキャリア構築する重要性が高まっています。
キャリア自律はもともとアメリカで提唱された概念ですが、日本においても厚生労働省の「令和4年版労働経済の分析」で重要な課題として取り上げられています。社員が自ら学び成長することは、個人だけでなく企業全体の成長にも寄与するためです。
終身雇用が当たり前ではなくなり、ジョブ型雇用へのシフトが進む現代では、社員がキャリア自律を実現できるように、企業が積極的に支援することが求められています。

キャリア自律が求められる背景

日本でキャリア自律が求められる背景には、いくつかの要因があります。まずは、労働人口の減少です。働き手が少なくなると、社員一人ひとりが能力を最大限に発揮し、生産性を高めなければなりません。そのためには、主体的なキャリア形成が不可欠です。
また、雇用形態の変化もキャリア自律が求められる要因の一つとなっています。従来の終身雇用や年功序列が見直されるなか、職務内容を定義して職務や実績で評価する「ジョブ型雇用」が徐々に浸透しています。

こうした流れのなかで、長く働いても上位ポストに就けるとは限らないケースが出てきており、個人が主体的にキャリアを設計する必要性が増しているのです。
そのほか、労働者の高齢化も要因の一つに挙げられます。「人生100年時代」を迎え、定年後も働き続けるケースが増加しており、長期的なモチベーションを維持するために、自らキャリアを設計することが求められています。

キャリア自律を支援するメリット

キャリア自律の支援は、社員の成長促進や企業の競争力向上につながる重要な施策です。ここでは、企業がキャリア自律を支援するメリットを詳しくみていきましょう。

生産性が向上する

キャリア自律の支援は、社員が主体的に学び、スキルアップに取り組む姿勢を育みます。主体性を持って成長する社員が増えれば、企業全体の生産性向上につながります。
また、社員同士が支え合い、スキルを補い合うような環境が生まれ、組織全体のパフォーマンスも高まるでしょう。こうした好循環を生み出すためには、個人もチームも成長し続けられるような仕組みづくりが欠かせません。

学びの機会や挑戦できる環境を整えることで、企業文化としての成長志向を醸成することが可能です。こうした文化は、新たな課題や変化に柔軟に対応できる力を養います。結果として、長期的な競争優位性を確立することができます。

個人のスキルや能力が向上する

キャリア自律を支援することで、社員は自分のキャリアについて主体的に考え、明確な目標を設定して行動するようになります。自ら成長のために努力する姿勢は、個人のスキルや能力向上につながるでしょう。
このような「自律型人材」を採用・育成する企業が増えています。自律型人材とは、企業に期待される自分の役割を理解したうえで、自ら考え、行動できる人材を指します。

こうした人材が活躍するためには、企業としてキャリア自律を後押しする文化が必要です。キャリア自律を促す文化を築くことで、社員一人ひとりが主体的に学び、スキルや能力を高め、企業全体の持続的な成長を支える力になるでしょう。

エンゲージメントが向上する

企業のキャリア自律支援は、社員との信頼関係を強化し、エンゲージメント向上につながります。「キャリア構築に理解があり、自分の成長を後押ししてくれる」と社員が感じるようになり、企業に対する帰属意識が強まるからです。
実際に、株式会社パーソル総合研究所の調査によれば、キャリア自律度が高い層は低い層と比較してワーク・エンゲージメントが1.27倍高いという結果も出ています。

出典:PRTIMES(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000550.000016451.html?utm_source=chatgpt.com

社員が仕事のやりがいや満足感を感じていれば、より高いパフォーマンスを発揮することが可能です。結果として、企業の成長につながり、企業と社員の双方にメリットがあるでしょう。

優秀な人材の採用や若手社員の定着につながる

キャリア形成に理解のある環境は、成長意欲の高い人材にとって魅力的であり、優秀な人材の採用や社員の定着につながります。特に若手社員は将来への不安を抱えやすく、十分な支援がないと早期離職のリスクが高まります。入社後も継続的にキャリア支援を行うことで、モチベーションやエンゲージメントが向上し、人材流出の防止に効果を発揮します。

さらに、キャリア自律支援により良質なコミュニケーションが生まれれば、職場内での結びつきが強化され、転職を抑制することにもつながります。そのため、キャリア自律の支援は企業にとって人材確保の競争力を強化する重要な施策であるといえます。

シニア人材の雇用の有効活用になる

労働人口の減少、キャリアの多様化が進む現代において、豊富な経験や専門知識を持つシニア人材の存在は貴重です。シニア人材の定義は企業や業界によって異なりますが、 医療制度や雇用保険上では 65歳以上と定義されています。定年=引退という固定観念から、企業はもとよりシニア世代自身のモチベーションが低下しているケースが少なくありません。

企業がキャリア自律を支援し、シニア社員が自身の強みを再認識して新たな目標に挑戦できる環境を提供すれば、モチベーションや生産性を高めることは十分可能です。
これは、単にシニア層の能力活用につながるだけでなく、多様性ある職場づくりに取り組む企業として対外的な評価を高めることにもつながります。

社員のキャリア自律を支援する取り組み

キャリア自律の支援と一口に言っても、実際に何をすればよいかわからないという企業は多いかもしれません。ここでは、社員のキャリア自律を支援するために企業の取り組みを具体的に紹介します。

キャリア研修

キャリア研修の実施は、代表的なキャリア自律支援の方法といえるでしょう。キャリア研修では、社員が自分の強みや価値観を再確認・整理することが可能です。参加者同士が刺激を受け合うことでグループダイナミクスが生まれ、個人では思いつかなかったようなキャリア目標を掲げられる可能性もあります。

年代やキャリア段階に応じて長期的なキャリアイメージを描くサポートを行い、継続的な支援を行うことが大切です。社員のニーズに合わせたサポートを行うことで、社員は1~5年先のビジョンをイメージしやすくなり、キャリア自律への意欲が高まります。
また、キャリア形成プログラムでは、キャリアプランの策定に加え、学習機会や情報提供を組み込むとより高い効果が期待できるでしょう。

キャリア面談

カウンセリングやコーチング、メンター制度などを活用したキャリア面談で個別にアプローチすることも有効です。キャリア面談を通して自分の課題や目標に向き合うことで、次に取るべき行動や必要な支援が明確になり、キャリア形成を主体的に進められるようになります。

また、現在の自分がイメージしているキャリアがうまくいかない場合、その理由を理解できるようになり、課題解決の糸口が見つかります。その結果、組織内でどのように活躍できるかを具体的にイメージでき、行動につなげることが可能です。
キャリア面談を行う際は、キャリアプランシートを活用し、過去・現在・未来の段階に分けて整理しながらキャリアを設計すると、スムーズに進行しやすくなります。

リスキル機会の提供や支援

リスキル機会を提供することも有効な支援方法です。リスキルとは、従業員が新たな業務や職種に対応するために必要なスキルを習得することを指します。社員に対してどのようなスキルを学びたいかヒアリングし、個々が希望する学習機会を提供することで、スキルアップやキャリア形成に対する意欲が高まります。

リスキルを支援する際は、直接業務に関係するものだけでなく、間接的に役立つ知識も対象とするのがポイントです。また、資格取得に対する報奨金や、学習の成果に応じた評価制度を整備するなど、インセンティブを設けることで、社員のモチベーションを高められるでしょう。

職務やポジションなどの状況の明確化

社内の職務やポジションを明確化することも、主体的なキャリア自律の促進につながります。どのようなキャリアパスがあるのかが明示されていれば、それに向けて、何に取り組むべきか、どのようなスキルを身につけるべきかといった具体的な行動指針が定めやすくなります。

また、キャリアパスに関する情報公開は人事の透明性を高め、公平性と効率性のある人材配置につながるでしょう。その結果、社員のエンゲージメントが向上し、自律的なキャリア形成へのモチベーションも高まります。

管理職への理解の浸透

社員のキャリア自律を促すためには、まず管理職が意識を変えることが重要です。キャリア自律に対する理解が不足している管理職が、いくら部下のキャリア支援を行っても十分な効果を得ることは難しいでしょう。

管理職自身が率先して自身のキャリアビジョンを描き、部下を適切にサポートできるよう変革していかなければなりません。そのため、管理職に向けた教育プログラムや研修を実施し、キャリア形成への理解を促す仕組みづくりが重要です。
これにより、管理職と部下との信頼関係が構築されれば、結果として企業全体でキャリア自律支援が促進されます。

ただし、近年ではマネジメント業務の増加により、管理職の負荷が高まっているのも実情です。そうした状況では、すべてを社内で完結させるのではなく、外部のキャリア支援サービスを併用することで、管理職の負担を軽減しながら社員のキャリア自律を支援する体制を整えることも効果的です。

キャリア自律を支援する際のポイント

社員が主体的にキャリアを形成するためには、企業が適切な支援を提供することが重要です。ここでは、企業がキャリア自律を支援する際のポイントを解説します。

1. 多様なキャリア研修を実施する

社員が能動的に学ぶ姿勢を育むためには、多様な研修プログラムを用意するのが効果的です。たとえば、自己理解を深めるアセスメントや、前述したグループダイナミクスを生む研修では、社員が自らを客観視できるようになり、自身の強みや価値観を再確認できます。
また、副業やボランティア活動などを許可し、外部からの刺激を受ける機会を設け、本業に還元できるスキルや経験を得られるようにすることも重要です。選択肢が豊富であれば、それだけ社員の自律的なキャリア形成への意欲が高まります。

2. 相談窓口やコンサルティングを導入する

相談窓口の設置やコンサルティングの導入も効果的です。社員がキャリアの方向性やスキルアップの方法、将来の目標設定について気軽に相談できるようになるでしょう。また、第三者的な視点からアドバイスを受けることで、これまで気づかなかった可能性や選択肢を見つけるきっかけにもなります。
ただし、窓口設置後も継続的なフォローアップが重要です。場合によっては、年齢や社歴の近い社員がメンターとしてサポートにつくと、より相談しやすくなります。

外部のサービスを活用し、キャリアコーチングの機会を提供するのもおすすめです。上司や先輩社員には話しづらいことも、外部のサービスであればプライバシーが守られ、安心して相談できます。
ベネッセコーポレーションが提供する『キャリアステージ』は、キャリアプランシートの作成も含め、社員のキャリアアップを包括的に支援するプログラムです。社員一人ひとりの強みや可能性を多角的に分析し、中長期的なキャリア戦略の策定をサポートします。キャリアの岐路に立つ社員や、自身の強みを活かして活躍したいと考えている社員には最適です。ぜひご検討ください。

3. 社員にキャリア自律の重要性を伝え理解してもらう

企業がいくらキャリア自律支援策を講じても、その必要性が社員に十分伝わっていなければ効果を発揮できません。キャリア自律が求められる背景や意図を明確に説明し、その重要性とメリットを理解してもらうことが不可欠です。

たとえば、研修やセミナーを通じてキャリア自律のメリットや成功事例を共有することで、社員がその価値を実感しやすくなるでしょう。また、自律的なキャリア形成を支援する制度やツールを整備し、実践につなげる環境づくりも重要です。

4. 年代や属性別にキャリア開発を実施する

社員は年代や職務経験、ライフステージによってキャリアに対するニーズや課題が異なるため、一律のアプローチでは十分な効果を得られない可能性があります。

たとえば、若手社員にはスキル習得やキャリアの方向性を明確にする支援が求められる一方、中堅社員にはリーダーシップや専門性の強化を目的としたプログラムが必要でしょう。また、管理職やシニア層には、次世代育成やセカンドキャリアの準備を含む支援が求められます。
年代や属性に応じたキャリア開発を行うことで、社員一人ひとりが自身の状況に合った成長機会を得られるようになり、自律的なキャリア形成を促進できます。

5. 社員のキャリア意思を確認し望まない社員に適切な対応をする

キャリア自律が重要とはいえ、全ての社員が同じ意欲や目標を持っているわけではないでしょう。キャリア自立支援が押し付けになってしまえば、それは主体性とは呼べません。企業はまず各社員の意思確認を行い、一人ひとりのキャリアに対する意思や価値観を丁寧に把握する必要があります。

キャリア自律に対して積極的でない社員には、無理に変化を求めるのではなく、現状での役割や強みを活かせる環境を提供することが大切です。キャリア自律への理解が不足している場合には、その重要性やメリットを伝える個別の機会を設けるのもよいでしょう。
組織全体としての成長と調和を実現するためには、社員の特性に合わせ柔軟に対応することが重要です。

キャリア自律の支援をしている企業事例

キャリア自律の支援を積極的に行っている企業は、具体的にどのような取り組みをしているのでしょうか。ここでは、キャリア自律の支援の企業事例を紹介します。

株式会社JTB

株式会社JTBは、「自律創造型人材」の育成を目指し、社内の人材育成プラットフォームを活用して研修やウェビナー、eラーニングを年間800本以上提供中です。これにより、社員が主体的に学び、スキル向上の機会を得られる環境を整備しています。
また、海外派遣研修や資格取得費用の補助など、個々のキャリアプランに応じた教育機会を充実させている点も特徴です。ほかにも、年代別のキャリア研修やキャリア面談など多様な対話の機会を創出し、社員のキャリア意識向上、職場での学びの風土醸成につなげています。

出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/career-award/winners/2020/01.html

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社では、キャリア形成支援制度に基づき、年に一度キャリア展望について社員が相談できる機会を設けています。また、「ダイバーシティ・キャリア課」という新たな部署を設置し、社員が気軽に相談できる窓口や多様な研修プログラムの実施が可能となりました。
さらに、スライドワークや時間単位有休などの柔軟な働き方を取り入れ、勤務時間の調整をしやすくすることで、自己啓発の時間を作り社員の成長が促されているようです。
キャリア形成支援と多様な働き方の奨励が相乗効果を生み、社員の満足度向上やモチベーション維持につながった好例といえるでしょう。

出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000584181.pdf

アサヒビール株式会社

アサヒビール株式会社では、社員がみんな活き活きと働き、能力を伸ばしていける環境づくりを人事基本方針と定めています。「キャリアデザインシート」をもとに、長期的なキャリア形成について上司と面談する機会を設けています。
また、キャリア形成の上で気になる他部署の業務内容を質問できる機会も導入しました。このように、自身のキャリアを軸に社内での人脈を広げることで、やりがいをもって成長し続ける風土が育っていくと期待されています。

出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002nomw-att/2r9852000002noxa.pdf

キャリア自律は企業と社員の成長に必要な取り組み

キャリア自律は、急速に変化する現代社会において、社員が主体的にキャリアを形成するための重要な要素です。一方で、企業の継続的な成長にも社員一人ひとりのキャリア自律が欠かせません。そのために、企業は研修や面談などさまざまな機会の提供を通じて長期的な支援を行い、社員の行動変容を促していく必要があります。

ベネッセコーポレーションの『キャリアステージ』は、カリキュラム型で社員の成長を包括的にサポートするキャリアサポートプログラムです。単発の支援にとどまらず、長期的なサポートが得られる点が魅力で、若手社員のキャリア不安を軽減し定着率の向上にもつなげられます。

また、キャリア支援の一部を外部に任せることで、マネジメント業務が集中しがちな管理職の負担を軽減する効果も期待できます。キャリア自律支援を通じて、企業の持続可能な成長基盤の構築や未来に向けた人材育成を実現したいとお考えの企業は、ぜひチェックしてみてください。