
本記事では「行動変容」をキーワードに社員の変革を促す方法について解説します。消費者のニーズやトレンドが目まぐるしく変わる現代において、働く社員も自身の行動や考え方を変えていくことが重要です。社員育成における考え方のひとつとして参考にしてみてください。
目次
行動変容とは
行動変容とは、個人がそれまで行ってきた特定の行動を変えるプロセスを指します。
もともとは健康・医療・保健の分野で、患者が健康維持や改善のために生活習慣を見直し、行動を変える手法として活用されてきました。近年ではビジネス領域でも注目されており、社員の成長促進や消費者行動の変化を促す戦略として取り入れられています。
行動変容アプローチの大きな特徴は、対象者が「自発的に」行動を変えそれを継続できる仕組みを構築する点です。
行動変容の具体例としては下記のような行為があげられます。
行動変容の具体例
- 今までに経験したことのない行動を新たに始める
- かつて経験したことのある行動を再開する
- 好ましくない行動をやめる
- 行動を修正する
- 変容した行動を継続する
社員育成における行動変容とは
社員育成で目指す行動変容は「目的にふさわしい行動を自発的に行う」能力を身につけることです。ビジネス環境は急速に変化し、常に新たな知識やスキルの習得が求められます。そのためには、行動変容の心理を理解し社員にこれを適切に促進することが必要不可欠です。社員が主体的に学び成長できる環境を整えることが組織力の強化につながります。
行動変容5つのステージモデルとアプローチ
「行動変容5つのステージモデル」は1980年代に禁煙の研究から生まれた理論です。
行動変容のプロセスを5段階に分け、最終ステージである「好ましい行動の維持」を目指します。このステップアップを促すためには各ステージにおける個人の心理状態を理解し、適切なアプローチを行うことが重要です。
無関心期
無関心期は行動変容の最初のステージです。このステージでは対象者は問題を認識していないか、変化の必要性を感じていません。6ヶ月以内に行動を変えようとする意志はなく、現状に満足している、もしくは問題を他人事と考えている段階です。まず対象者に自身の現状や環境を正しく理解してもらい、変化の必要性を認識させるアプローチが必要です。
アプローチ方法
成功事例や失敗事例を共有し、現状を正しく把握してもらいます。変化によって得られるメリットを伝えることも有効です。対象者が変化を意識するきっかけを提供することで、次のステージへのスムーズな移行を促すことができます。
関心期
関心期は、問題を認識し変化の必要性を考え始めるステージです。ここで対象者は6ヶ月以内に行動を変えようとする意欲を見せますが、まだ具体的な行動には至っていません。情報を集めながらメリット・デメリットを比較し、最適な選択肢を模索し始めます。
このステージの対象者を支援するには、具体的なメリットを示しながら変化に対する不安や疑問を解消する情報を提供することが大切です。この支援により、対象者が次のステージに進む意欲を高めます。
アプローチ方法
このステージでのアプローチは情報提供と教育が大きなポイントです。研修では具体的なスキルや知識を提供し、ワークショップやグループディスカッションを通じて、対象者が自らの考えを深め他者の意見を取り入れる機会を作ります。また、疑問や不安を解消する場を用意し、変化に対する抵抗を軽減することも大切です。
準備期
準備期は、対象者が具体的な行動計画を立て、変化に向けた準備を進めるステージです。対象者は1ヶ月以内に行動を起こす意思があり、必要なリソースやスキルを確認しながら、実行に向けた具体的なステップを検討し始めます。
この段階では目標達成のための現実的なプランを策定し、対象者のゴールへ到達する意欲と自信を高めることが求められます。
アプローチ方法
このステージでは対象者が実行可能な目標を設定できるよう支援することが効果的です。たとえばSMARTゴール(※)の設定方法を指導するなどのアプローチが有効です。
対象者のゴール到達への自信を高めるために、具体的かつ達成可能なステップを明確にして実行への道筋が見えやすい支援を行います。
※SMARTゴール:対象者にふさわしい目標を策定するためのフレームワーク。「具体的で進捗が目に見え、努力によって達成可能であり、本人のライフプランに関連して期限が定められている」目標を作るための手法。
実行期
実行期は、対象者が実際に行動を起こし変化を実践するステージです。この段階で対象者は、すでに行動を変えて6か月以内である状態です。このステージではモチベーションを維持しながら好ましい変化をさらに継続できるかどうかが課題です。
対象者にはモチベーションを阻害する要因を乗り越え、行動を習慣化することが求められます。
アプローチ方法
対象者が継続的に行動できるよう、実行の障害を取り除くサポートに努めましょう。行動の進捗を確認し、適切なフィードバックを提供することで対象者に継続するモチベーションを維持してもらいます。
また、仲間や支援者と交流する機会を多く提供し、励まし合う環境を整えましょう。対象者は小さな成功体験や喜びを重ねることで行動を維持する意欲を高めます。
維持期
維持期は、変化した行動を定着させ、長期的に持続させるステージです。対象者は行動を変えて6か月以上経過しており、この期間を経て新たな行動が習慣化されています。この最終ステージをもって行動変容は達成されます。
このステージ以後は、さらにモチベーションを維持し個人が変化を自然に維持できるようになることが次なる目標です。
アプローチ方法
このステージで支援者は、対象者の変化の定着とさらなる成長への環境を整えることが求められます。
継続的なサポートと細かいフィードバックを行いましょう。また、達成した成果を評価し努力を認める機会を提供することも大切です。対象者は変化のメリットを再確認でき、次の目標に意欲的になるでしょう。
社員の行動変容を促進する職場とは
ここでは社員の行動変容が起こりやすい職場の特徴を解説します。自身の職場が該当する環境であるかどうかチェックしてみてください。
社員が主体的に動ける職場
社員が主体的に動ける環境は、彼らが自らの意思で行動を起こすことを促します。そのためには、まず目標設定のプロセスに対象者を巻き込むことが重要です。自身が関わった目標が明確であり達成可能なものであれば、対象者はその目標を達成するためにどのように動くべきか主体的に考え、積極的に取り組む動機を持つことができます。
また、フィードバックの仕組みを整えることも大切です。適切な内容と量のフィードバックは、対象者が自身の行動の結果を把握し次のステップを考えるきっかけとなります。
成長を実感しやすい職場
成長を実感しやすい環境は対象者のモチベーションを高め、行動変容を促進します。そのためには、小さな成功体験を積み重ねる機会を提供することが大切です。対象者が成功を経験することで自信を持ち、さらなる挑戦に意欲的になります。
また、キャリアパスが明確であることも成長を実感しやすい要因のひとつです。明確なキャリアパスが示されている環境において、対象者は自身の成長ビジョンを描きやすく行動変容の意義をより強く感じることができます。
人間関係がよい職場
良好な人間関係は、対象者が安心して行動変容に取り組むための重要な基盤です。信頼関係が築かれた職場では、対象者は失敗を恐れずに新しいことに挑戦できます。また、チーム内でのコミュニケーションが円滑であることも行動変容を後押しする要素です。
上司や同僚とのオープンな対話が可能な環境を整えることで、良好な人間関係が築かれ、互いにサポートし合いながら成長する文化が育まれます。
相談しやすい職場
相談しやすい環境は対象者の行動変容を後押しします。対象者が困難に直面した際に適切なサポートを受けられることが保証されると、安心して新しい挑戦に取り組めます。
また、自由に意見を述べられる場を設けることで、問題解決の糸口が見つけやすくなり、行動変容を妨げる障害を迅速に取り除くことができます。具体的にはメンター制度やカウンセリング、コーチングが導入されており、社員が自由にそれらを活用できている職場が行動変容を促す職場といえるでしょう。
行動変容におけるよくある課題とその解決法
行動変容の促進を行うときに、人間の心理特性や環境によって生まれやすい課題があります。ここでは行動変容におけるよくある課題とその解決策について解説します。
1. ステージの逆戻り
行動変容では対者が一度進んだステージから後戻りしてしまうことがあります。人間の心理特性として無意識のうちに従来の行動パターンへと戻ってしまうのがその理由です。
特に、十分なサポートが得られない場合や、進捗を可視化できない環境では、モチベーションの低下が逆戻りを助長します。この課題を克服するためには、継続的なサポートの提供と進捗のフィードバックが不可欠です。
解決法
- 定期的なフィードバックを実施し、行動変容の進捗を確認する
- 小さな成功体験を積み重ねてもらい、自己効力感を高める
2. 現状維持バイアス
現状維持バイアスとは、現状を変えたくないという心理的な抵抗を指します。変化に対する不確実性やリスクを過大評価し不安を抱くことが原因です。このバイアスを克服するためには、変革による具体的なメリットを明確に伝え、変化がもたらす価値を理解してもらうことが大切です。
また、最終ステージまでのひとつひとつのステップを小刻みにすることで変化による精神的負担を減らすことも有効です。
解決法
- 変化によるメリットを定量的かつ具体的に示す
- スモールステップにより変化への抵抗感を軽減する
3. 同調バイアス
同調バイアスとは、周囲の人々の行動や意見に影響されやすいという集団心理における特性です。周囲の人々が変化に消極的である場合、個人もそれに引きずられてしまう現象が起こります。
このバイアスを乗り越えるためには、リーダーが率先してポジティブな行動変容のモデルを示し、成功事例を共有することが有効です。リーダーが模範を示すことでチーム内に行動変容を受け入れる土壌が作られます。
解決法
- リーダーが積極的に行動変容を実践し、模範を示す
- 成功事例を共有し、変革の意義を広く伝える
4. モチベーションの維持
行動変容は最終ステージに到達するまでに一定の時間を要します。そのためステージの途中でモチベーションを維持できなくなることは行動変容における最もよくある課題といっても過言ではありません。
支援者は明確な目標を設定し、短期・中期・長期のゴールを組み合わせることで、達成感を持続的に得られる環境を整えましょう。また、モチベーションが維持できていないと感じたら、フィードバックや評価を通じ、努力を認める機会を増やすとよいでしょう。
解決法
- 短期・中長期の目標を設定し、達成感を促進する
- 定期的なフィードバックを行い、モチベーションを維持する
5. リソースの限界
行動変容の促進を実行する上で、時間・人材・予算といったリソースの制約が障害となることがあります。限られたリソースの中でいかに効果的に推進するかは管理職にとって大きな課題です。
まず優先順位を明確にし、重要なタスクに関する行動変容の促進にリソースを分配しましょう。効率的なリソース分配のために外部の専門家やツールを活用するのもおすすめです。
解決法
- 変革の優先順位を明確にし、重要なタスクに集中する
- 外部の専門家やツールを活用し、リソースの有効活用を促進する
ベネッセの『キャリアステージ』で行動変容をサポート!
ベネッセコーポレーションの『キャリアステージ』は、単発型ではなく、カリキュラム型で行動変容をサポートするキャリアコーチングサービスです。主体的な学びと自発的なチャレンジ行動を促進し、受講生の94%がセッション受講後に意識・行動の変化が見られました。
独自開発のキャリア支援カリキュラムや、Udemyを利用したスキルアップ支援など、多彩なサービスがあるのも人気を集める理由の一つです。自ら学び考える社員を育てるために『キャリアステージ』の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
行動変容に関するよくある質問
- Q行動変容を促すのに効果があるカリキュラムのポイントは?
- A行動変容を促すコンテンツには、動機(やりたい)、技能(できる)、自己効力感(できそう)の要素が含まれていることが重要です。この3要素をバランスよく取り入れることで、長期間にわたり行動変容が実現します。個人の能力とサービス内容を確認しながらふさわしいカリキュラムを選びましょう。
- Q研修を頻繁に行っているが行動変容の促進に効果が薄い。研修が上手くいかない理由は?
- A研修の効果が薄い原因としては受講者の動機付け不足、研修内容と実務の関連性の低さ、職場でのサポート体制の不備などが考えられます。また、研修後のフォローアップや実践機会の欠如も、行動変容の促進を妨げる要因の一つです。行っている研修にこれらの要因が含まれていないかチェックしてみてください。
- Q具体的に行動変容を促す取り組みが成功しているか計測するにはどうしたらいい?
- A行動変容の成功を測定するには、定量的な指標(KPI)の設定と、定性的なフィードバックの収集を組み合わせることが有効です。具体的には、行動チェックリストの作成、対象者に対するアンケート実施などが挙げられます。
社員の行動変容を促す職場環境を整えよう!
社員の行動変容は組織の成長に必要不可欠です。行動変容の促進には各ステージに応じた適切な支援と、働きやすい職場環境の整備は欠かせません。社員が自発的に変化しやすい環境を整え、継続的にサポートすることで企業全体の行動変容を促進し、さらなる成長へとつなげていきましょう。
社員の行動変容に関して課題を抱えている企業の皆様は、ベネッセコーポレーションが提供している『キャリアステージ』サービスを活用するのがおすすめです。カリキュラム型のキャリアコーチングサービスで、主体的な学びと自発的なチャレンジ行動を促す効果が期待できます。詳細なサービス内容、お問い合わせについては下記のリンク先をご覧ください。

